広告大手電通の違法残業事件の初公判が、東京簡裁で開かれた。労務管理を巡り、大企業の刑事責任が法廷で裁かれるのは初めてのことだ。
法人としての電通を略式起訴した検察判断を、簡裁が覆した異例の裁判である。
旧態依然の長時間労働を是とする日本の企業風土に再考を迫るものであり、略式手続きを「不相当」とした簡裁の判断は評価できる。
公判では、労働基準監督署から再三にわたり、指導や是正勧告を受けていたにもかかわらず、抜本対策を講じなかった電通のずさんな労務管理の実態が明らかになった。
華々しい業績の陰で、社員の命と健康を軽んじてきた企業責任は極めて重い。
一部社員は今なお「隠れ残業」を続けているとも指摘される。法廷で山本敏博社長が労働環境を改革する決意を示したものの、どこまで組織体質を変えられるかは不透明だと言わざるを得ない。
電通に求められるのは、徹底した原因究明と全社挙げての意識改革だろう。日本の企業全体に波及するような改善策を目に見える形で実行していかなければ、地に落ちた信頼は取り戻せない。
過労死や過労自殺をなくす社会づくりは、最重要課題である。中小を含めた企業トップは指導力を発揮し、取り組みを加速させる必要がある。
各政党も、官民で進む働き方改革を停滞させることがないよう、衆院選を通して議論を深めるのが大切だ。
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