現実見据えて打開策探れ

 欧州連合(EU)からの離脱を巡り、英国はいよいよ袋小路に入り込んだというほかない。一体どこへ向かおうとしているのか。

 英国のメイ首相が進退を懸け、EUとの間で合意した離脱協定案への賛成を議会に呼び掛けたが、下院は否決した。3度目の採決で、捨て身の策に打って出たが不発に終わった。

 既にEUからは、離脱日を当初予定の今月29日から4月12日に延期することへの了承を得ている。

 離脱案を否決されたからといって延期の事実は変わらないものの、期間は残り2週間弱しかない。

 メイ氏はこの間に、合意した離脱案に代わる道を示すようEUから求められている。果たして、こんな短期間で一本化できるだろうか。

 最大の争点は、EU加盟国のアイルランドと英領北アイルランドとの陸上国境問題である。離脱後の国境管理が確定するまで、加盟国間の関税や通関手続きを撤廃する「関税同盟」に英国が引き続きとどまるという条項が、離脱案には残されていた。

 この条件に、与党保守党の離脱強行派が「EUの支配下が続く」と反発し、メイ氏の退陣表明もほとんど効果がなかった。

 議会も現在の離脱案に代わる案を模索中だ。とはいえ、迷走している。現在の離脱案に代わる八つの案を設けて決を採ったが、いずれも過半数に達しなかった。

 八つの案は現時点で考え得る打開策の全てと言え、「離脱の中止」や「離脱を確認する再度の国民投票」の実施も含まれていた。

 案を八つからさらに絞り込み、再び採決しようという意見も議会内にあるようだが、見通しは不透明だ。

 英国では離脱撤回の請願に600万人が署名し、100万人が国民投票の実施を求めてデモ行進したとされる。EUのトゥスク大統領は、こうした動向を支持する形で「EU残留を望む人々の意向を裏切ることはできない」と、暗に政策の抜本的見直しを促している。

 混乱を極めているのを考慮すれば、トゥスク氏が示唆するように離脱を撤回するか、国民投票を再度行うのが現実的な選択ではないか。

 ホンダが英南部の工場での四輪車生産を2年余り後をめどに終える方針を打ち出したのは、英国を動揺させた。ホンダにとどまらず、EU離脱の影響を懸念して英国での事業を見直す動きが、各国企業の間で拡大を続けている。

 こうした深刻な事態を目の当たりにしながらも、英政府と議会はなぜ意思決定ができないのか、理解に苦しむ。

 メイ氏の求心力低下は目を覆うばかりだ。これでは4月12日に、何の取り決めもない「合意なき離脱」へ突き進む恐れがある。

 政府と議会は現実を見据え、一刻も早く打開の道を探るべきである。