銃を使った卑劣極まりない凶悪事件が、米国を揺るがしている。子どもを含め、年間3万人以上が銃弾で命を奪われているのに、銃規制を進めることは難しいのだろうか。
 
 事件は米西部ネバダ州ラスベガスで起きた。ホテルの32階から、容疑者の男が野外コンサート会場に向けて銃を連射し、約550人もの死傷者を出した。
 
 過激派組織「イスラム国」(IS)が、容疑者は「ISの兵士」と主張する声明を発表したが、米連邦捜査局(FBI)は国際テロ組織との接点は確認できず、単独犯だとみている。
 
 容疑者は捜査当局が部屋に突入する前に自殺したが、動機の解明は欠かせない。
 
 米国史上最悪となった事件は、銃規制を巡るさまざまな問題を国民に突き付けた。
 
 容疑者が宿泊していた部屋からは、大量の銃と銃弾が押収された。当局によると、容疑者は、犯行に使用した銃に「バンプ・ストック」という装置を付けて、簡単に連射できるようにしていた。
 
 米国では、連射可能な全自動の銃を市民が所持することは原則、違法である。ところが、1発ずつしか撃てない半自動の銃を、機関銃のように改造する部品の使用は禁じられていない。
 
 銃器に関して、法に抜け道があるのは看過できない。
 
 事件を受けて、米民主党議員団は、銃の殺傷能力を高める部品の製造や販売などを禁止する銃規制強化法案を提出した。銃を使った大量殺人を防ぐためには、欠かせない措置と言える。
 
 そもそも、なぜ米国では市民が簡単に銃を入手できるのだろうか。合衆国憲法修正第2条は、市民の武装の権利を認めている。これが、銃で自衛する権利が保障されていると主張する保守派のよりどころである。
 
 事件が起きたネバダ州は、とりわけ銃規制が緩やかで、所有者は届け出などを義務付けられていない。
 
 これまで銃を使った凶悪犯罪が起きるたび、規制強化を求める声が上がったが、共和党や保守派が抵抗し、厳格な規制に踏み切れなかった。
 
 ただ、風向きは変わりつつある。銃規制に慎重な意見が多い共和党でも、有力議員からバンプ・ストックの禁止に積極的な意見が出てきた。
 
 銃規制反対を訴えるロビー団体の全米ライフル協会(NRA)も、この装置について「追加制限を課すべきだ」との立場を打ち出した。
 
 これを受けて、トランプ大統領も「短期間で(制限を)検討する」と述べた。
 
 NRAとトランプ氏が柔軟な姿勢を示したことで、銃規制がわずかながら進む可能性が出てきた。
 
 いつ、どこで、無差別に市民を標的にした乱射が起きるか分からない現状に、市民は不安を募らせている。
 
 トランプ政権と議会は、再発防止に向けて、実効ある規制策を講じるべきだ。