鉄鋼大手の神戸製鋼所によるデータ改ざん問題は、底なしの様相だ。
 
 鉄鋼事業の主力製品やアルミ、銅製品などで、強度などの性能データを改ざんしていたという。取引先企業との間で決めた仕様に適合しない製品について、検査証明書のデータを書き換え、合格品のように装うなどしていた。
 
 事態は日を追うごとに深刻化し、グループ会社9社が手掛ける特殊鋼など9製品でも新たに不正が分かった。
 
 問題は計13製品に及んでおり、納入先は延べ約500社に上る。
 
 不正は社内にまん延していた疑いが強まっている。なぜ改ざんを見逃さない体制が取れなかったのか、不正はほかにないのか。徹底的に調べなければならない。
 
 自動車大手各社は、神戸製鋼の製品を使った車部品の安全性の追加調査に乗り出した。不正の期間を巡っては、10年を超える可能性があることも判明した。
 
 神戸製鋼は、安全点検に協力する責務があるのを忘れてはならない。
 
 日立製作所は鉄道車両に部品交換の必要が生じた場合、費用を請求する方針を示している。負担を求める動きが出ることも想定される。
 
 不正問題の全容はまだ見通せないが、損害賠償請求や取引の中止などが相次げば、業績悪化は避けられない。下請けや仕入れ先への悪影響も懸念される。
 
 神戸製鋼の創業は1905年にさかのぼる。看過できないのは、そんな老舗が、不正に染まる企業体質から脱却できずにいることだ。
 
 99年に、株主総会対策として総会屋に現金を渡していた不正が発覚した。2006年には、製鉄所で環境基準を超えるばい煙を排出しながら、データを改ざんしていたことが明らかになっている。
 
 これにとどまらず、グループの日本高周波鋼業も鋼材の試験データを捏造(ねつぞう)。09年には地方議員選での違法献金が明るみに出た。16年にも、傘下の神鋼鋼線ステンレスでデータ改ざんが確認されている。
 
 こうした不祥事が起きるたびに法令順守を誓ってきたはずだ。しかし、それは浸透しなかったようだ。
 
 品質を軽視するような体制が、どうして根付いてしまったのか。再発防止策をしっかりと構築しなければ、不信感は払拭(ふっしょく)できまい。
 
 今回の問題では、取締役会で過去に一部製品の不正を把握しながら、公表していなかったことが判明している。
 
 隠蔽(いんぺい)体質まで根付いているのだろうか。情報開示の在り方にも首をかしげざるを得ない。経営陣の姿勢が厳しく問われよう。
 
 東芝の利益水増しや、日産自動車による無資格検査問題と、名だたる企業の不祥事が相次いでいる。
 
 日本のものづくりへの信頼を取り戻すためにも、不正を許さない企業風土をつくっていかなければならない。