米国が国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退を表明した。「反イスラエル的姿勢」があると問題視しており、イスラエルも追随する動きを見せている。

 ユネスコは教育、文化、科学を通じて各国民の協力を促し、世界平和と安全に貢献することを目指している。「世界遺産」の管理・登録を担うなど文化、自然遺産の保護活動にも取り組んできた。

 米国の離脱表明が、活動に与える影響が懸念される。

 ユネスコは昨年、エルサレム世界遺産の一部をイスラエルが破壊しているなどとする決議を行った。これに反発したイスラエルは「イスラム教徒寄りに偏向している」として敵対姿勢を強めていた。

 ユネスコでは、中国やアラブ諸国などの発言力が増し、米国や日本には「政治性」に懐疑的な見方もある。

 国連の機関として、政治的に公正な立場が求められるのは当然だ。

 米国務省は「イスラエルに対する偏向姿勢を終わらせる必要がある」と指摘し、抜本改革を訴える。脱退の時期は2018年末で、その後はオブザーバー参加し、世界遺産の保護や報道の自由、科学分野での協力促進のために貢献するとしている。

 米国の離脱表明は、「ロシア、中国寄りだ」との批判もあったイリナ・ボゴバ事務局長の後任選びの時期だった。

 後任には、フランスのオードレ・アズレ前文化相が選ばれた。敗れたカタールのハマド・カワリ前文化相は反ユダヤ的な言動が一部で批判されていた。米国の脱退表明が、各国の投票行動に影響を与えた可能性は否定できない。

 米国は1984年にも、政治的偏向や放漫運営を理由にユネスコを脱退した。2003年10月に、運営・構造改革を評価して復帰している。

 オバマ政権時代にも圧力をかけてきた経緯がある。11年には、ユネスコが、独立国家として国際的な承認を得ていないパレスチナの正式加盟を決めたのに反発し、ユネスコ予算の22%を占める分担金を凍結する措置を取った。

 分担金の凍結は兵糧攻めのように映るが、ユネスコも米国の言い分を真摯(しんし)に受け止めるべきである。

 ただ、米国も強硬手段を繰り返すのではなく、穏やかな対応をしてはどうか。

 日本政府も一部の活動には神経をとがらせている。15年には、「世界の記憶」(記憶遺産)に、中国が申請した「南京大虐殺」の関連文献が登録された。

 韓国の民間団体などは、従軍慰安婦の資料を登録申請している。

 ユネスコの取り組みが、日本と中国、韓国の軋轢(あつれき)を高める結果になるのは残念なことである。本来の趣旨の「文化対話を通じた平和構築」に立ち返る必要があろう。

 ユネスコを「対話の場」と位置付けて、各国の融和を呼び掛けるアズレ氏の手腕に期待したい。