徳島県内の衆院選小選挙区の投票率は46・47%で、全国最低となった。県内で戦後最低だった2014年の前回を0・75ポイント下回った。
有権者の半数以上が棄権する事態は深刻である。低投票率が続けば、代表制民主主義の根幹が揺らぎかねない。
なぜ、低投票率に終わったのか。県民一人一人が自分自身の問題として考える必要がある。
徳島1、2区とも、候補者の顔触れに新鮮さを欠いた。特に2区では、野党第1党だった民進党側が前回に続いて候補者を擁立できなかった。投票日は台風21号が接近し、荒天に見舞われた。
理由はいろいろ挙げられるが、政策論争が低調だったのも大きな要因だろう。
選挙では安倍政権の評価、消費税増税や憲法改正の是非など、さまざまな争点が浮上した。しかし、論戦は盛り上がらなかった。
演説会などでは、自己アピールや他党の批判に力を入れる候補者の姿が目立った。政策の主張をほどほどにするのではなく、具体策を含めて、よく説明すべきだった。
有権者も投票の重さを自覚しなければならない。
国民が政治に参加する機会を放棄すれば、政治の劣化を招く。それは、資質や品格を欠く人物が国会に送り込まれ、数々のスキャンダルを起こしているのを見れば明らかだ。政治家を見極める目を養うことが求められる。
県内小選挙区の18、19歳の投票率も35・24%(速報値)と、全国平均を大幅に下回った。高校生ら若い人たちへの主権者教育は重要度を増している。
気掛かりなのは、低投票率が今回だけではないことだ。
中選挙区制の時代は、県内の衆院選の投票率は軒並み70%を超えていた。
だが、1994年の小選挙区制導入後に行われた8回の衆院選では、2009年の70・11%を除き、ほとんどが60%前後に低迷し、前回と今回は50%を割った。
全国の投票率も同様の傾向を示している。
一つの選挙区から原則3~5人が当選する中選挙区制では、同じ政党から複数が出馬するため、候補者は多様性に富む。
これに対して、当選者が1人に限られる小選挙区制では、政党は候補者を1人しか立てない。有権者にとっては選択肢が少なく、1票を投じたい候補者が見つからないという欠点がある。
さらに、「死に票」が多いのも一因に挙げられる。投票しても、当選や比例復活につながらない可能性が高いと、投票所に足が向きにくくなるからだ。
今回、「死に票」は全国で32・6%にも上った。
小選挙区制には従来、民意を正しく反映しないとの批判がある。制度上の問題が投票率低下を引き起こしていないかについても、検証する必要があるだろう。