「本との出会い」は、人の成長にとって極めて大切な要素だ。街角の本屋さんが次々とシャッターを下ろす中、公立図書館の役割はますます高まっている。きょうは「文化の日」。本のある暮らしを守るために、身近にある図書館を活用しよう。

 気掛かりなデータがある。本紙の今夏の調査では、公立図書館を置く県内18市町の2016年度の貸し出し者数が5年前と比べると、徳島市、鳴門市、東みよし町を除く15市町で減少していた。

 最大の原因は、人口減や少子高齢化の影響だろう。人が減っていく、という現実が大きな影を落としている。

 だが、住民の図書館離れが進んでいるのなら、看過すべきではない。

 近年、公立図書館は他の公的施設と同様、予算や人員の削減対象となり、指定管理者の委託運営が増えている。今、図書館を支えるのは、厳しい条件の中で、住民の要望に必死に応えようとする人たちだ。

 「1人でも多くの人に使ってもらうことが励みになる」。現場で踏ん張る人たちは口をそろえる。行政は財政難を理由に切り捨てることなく、現場と手を携え、住民に利用してもらう方策に知恵を絞るべきだ。

 徳島市立図書館は5年前、JR徳島駅前のアミコビルに移転し、来館者や貸し出しを増やしている。規模や立地の良さはあるにしても、移転を機に始まった工夫や努力は大いに参考になるだろう。

 例えば、徳島大付属図書館との提携による「図書館で健康いきいき講座」だ。昨秋から同大の医学者を講師に「健康診断の数値の見方」「認知症とは」など、健康をテーマに始めた。来月は「糖尿病」を予定している。

 図書館の調査力を起業に役立てた女性経営者の講演など、他県の図書館の協力も仰いでイベントを計画する。

 廣澤貴理子副館長は「図書館を『使える場所』だと思ってもらいたい。身近な困り事や悩み、解決したいことに何かしら道しるべを提供したい」と言う。

 牟岐町立図書館は、木本千代子副館長の発案で昨年夏からフリーマーケットを開催している。回数を重ねるごとに出店者や来場者が増え、住民交流の場になっている。

 共通するのは、図書館は日々の生活を豊かにするためにある、という発想だ。

 図書館が誇る機能として忘れてはならないのが、図書館から遠い住民に対する移動図書館の事業だ。徳島、鳴門、阿南、三好、海陽の5市町にある。

 石井町では、幼稚園などを回って幼児に親しまれていた図書館車「ふじっこ号」が昨年夏、老朽化で廃止となった。しかし、これを惜しむ声を町や議会がくみ取り、寄付を募って車を購入することが決まった。

 本は、いつの時代も子どもたちの友である。