所有者が亡くなった後も相続登記がなされないまま、現在の持ち主が分からない土地が全国で急増し、社会問題化している。

 民間の有識者研究会の独自推計では、2016年時点で九州の面積を上回る約410万ヘクタールが「所有者不明地」になっているという。

 国土の荒廃につながりかねない深刻な事態である。国や自治体は、できることから早急に改善策を講じなければならない。

 所有者不明の状態が続くと固定資産税などの税徴収はもとより、都市計画や農地の集約化、森林保全など、国民生活に密接に関わる事業に多大な影響が及ぶ。

 全国の自治体では既に、地域の再開発や道路整備、防災対策といった公共事業を進める際、土地所有者の特定に膨大な時間とコストが掛かり、事業の大幅な遅延や停滞が生じている。

 懸念されるのは、急速に進行する少子高齢化と人口減少が、土地利用の機会を一層減少させ、問題が深刻化していくことだ。それが証拠に有識者研究会は先ごろ、「このまま問題を放置すれば、40年時点の所有者不明地は累計で約720万ヘクタールに達する」とした将来推計を公表した。

 有識者研究会はさらに、所有者不明地が及ぼす経済損失について、17~40年の累計で約6兆円に上るとした見通しも示した。

 看過できないのは、損失額の約6割に当たる約3兆6千億円が、森林や農地の管理が行き届かないことで、洪水や土砂災害を防ぐ機能に支障を来すとしている点だ。

 所有者不明地の拡大は、ごみの不法投棄や雑草の繁茂など、景観問題にも及ぶ可能性が高い。放置してきた国や自治体の責任は重いと言わざるを得ない。

 国土交通省は、増え続ける所有者不明地に歯止めをかけるため、一定の公益性を持った事業に限り、所有者が分からない土地を利活用できる仕組みを整備する方針だ。

 具体的には、長期間放置されている土地に5年程度の利用権を設け、自治体や企業などが公益性のある事業を進めやすくするという。

 制度づくりで課題になるのは、所有者不明地を活用する際の条件設定だろう。国は、それぞれの地域の実情に即した無理のない仕組みにする必要がある。

 県や市町村も、国民の理解が得られる制度になるよう、国への提言活動を積極的に行ってもらいたい。

 所有者不明地が増える背景には、相続登記が任意で強制力がないことが挙げられる。法務省は、不動産登記が適切に行われるよう、政策的に誘導する方策を早期に整えるべきだ。

 国と地方の財政は厳しさを増している。政府は、人口増加を前提としてきたこれまでの制度から、人口減少社会に対応した仕組みへの転換を急がなければならない。