トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が、北京で首脳会談を行った。

 最大の焦点となった北朝鮮への対応について、核開発を放棄するまで経済的圧力をかける必要性で一致したが、習氏はさらなる制裁の強化には言及しなかった。

 北朝鮮の不安定化を恐れる中国は、石油の全面禁輸などで締め付け過ぎれば、金正恩(キムジョンウン)体制の崩壊につながりかねないと見ているのだろう。

 圧力一辺倒ではなく、外交努力による解決を目指すのは当然である。

 ただ、このまま核・ミサイル開発を許し、米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の運用能力を北朝鮮が獲得すれば、米国との軍事衝突に発展する危険性が増すのは必至だ。日本と韓国だけでなく、中国が受ける打撃も計り知れない。

 対話による解決を強調する中国は、北朝鮮に大きな影響力を持つ国として、その責任を果たさなければならない。

 会談で習氏は、米中協力が「唯一の正しい選択だ」とし、「北朝鮮核問題での連携・協調の強化で合意した」と述べた。

 昨年11月に採択された国連安全保障理事会の制裁決議に基づき、中国は今年2月から北朝鮮の主要産品である石炭の輸入を、年内いっぱい停止する措置を取っている。

 9月からは、新たな安保理決議に沿って、ガソリンなど石油精製品の輸出制限を含む制裁を実行している。北朝鮮との銀行取引を規制する独自制裁も始めた。

 強力な制裁に消極的だった中国が、日米など国際社会の要請を受け、前向きになってきたのは評価できる。

 しかし、中朝国境で密輸が続いていると指摘されるなど、依然として抜け道は残っているようだ。

 習氏は共同記者発表で語ったように、安保理決議を厳格に履行する責務がある。加えて、北朝鮮の核放棄に向け、実効ある独自制裁をさらに打ち出すことが求められる。

 米中間の貿易不均衡問題では、会談後に両国で計約2500億ドル(約28兆円)の商談がまとまった。

 中国側が米国の製品や技術を購入する契約が大半を占め、不均衡の是正に向けた姿勢を演出した形だ。

 米国の対中赤字が2016年で3470億ドルと、対日赤字の5倍に上ることに、トランプ氏は不満を強めている。それだけに、商談の成立は国内にアピールできる大きな成果と言えよう。

 だが、中国にはダンピング(不当廉売)や、進出企業に先端技術の移転を強要していることへの批判もある。そうした問題の解消も急がれる。

 巨額の契約により、安全保障面で中国に甘くなるのも禁物だ。とりわけ、海洋進出を強める東・南シナ海問題は地域の安定を脅かしており、厳しく対処する必要がある。トランプ氏は、それを忘れないでもらいたい。