勤務時間と保育時間をにらみながら、わが子の保育園を探し出し、どうにか仕事と子育てを両立させた。やっと小学校入学で一息つけるかと思えば、放課後の預け先が見当たらない。近くに祖父母もいない。さてどうするか。

 頼みの綱の放課後児童クラブ(学童保育)は、延長保育がある保育園より終わりの時間が早い場合が多い。しかも、子どもが小学校入学後も短時間勤務ができる事業所は少ない。つまり、子育て環境は保育園時代より悪くなっているのが実情だ。

 これが「小1の壁」といわれる問題である。

 そうした状況で学童保育が満杯で利用できないとなれば、どうなるか。「小1の壁」は越えられない高い壁として立ちはだかり、仕事の継続を阻むかもしれない。

 保育園の待機児童ほど注目を集めていないが、学童保育の待機児童は県内でも発生している。

 徳島新聞が県内24市町村の4月1日時点の状況を調べたところ、徳島、阿南、阿波の3市と石井町で計78人の待機が発生していたことが分かった。鳴門市は数を把握しておらず、全体の数はもっと多い可能性がある。

 小さな数字ではない。仕事の継続を諦めるかどうかの危機に立たされた世帯が78もあったのである。各世帯が直面した葛藤に思いを寄せたい。

 しかも、2年前に比べて70人も増えている。手をこまぬいていれば、さらに増えるのではないか。

 行政は全力を挙げ、学童保育の待機児童をなくさなければならない。調査でゼロだった市町村も、動向の把握に細心の注意を払う必要がある。

 今回の調査で18人の待機児童があった石井町は、4日開会した町議会12月定例会に提案した補正予算案に、学童保育所を約1・5倍に増築する費用を盛り込んだ。他の自治体も、対策を具体化させてほしい。

 費用のかかる対策でなくとも、遊休施設を活用するなどの方法はないか。支援員を確保するなどして保育時間を延ばせないか。利用者側に立った検討が求められよう。

 放課後の居場所としては、学童保育の他に放課後子ども教室や児童館などがある。それらも組み合わせ、児童や保護者にとってよりよい環境をつくってもらいたい。

 事業所側の努力も欠かせまい。厚生労働省の2016年度の雇用均等基本調査によると、育児のための短時間勤務制度がある事業所は65・6%にとどまり、このうち小学校入学以後も利用できる事業所は22・7%にすぎない。

 上昇傾向にあるとはいえ、「小1の壁」をなくすにはまだ不十分だ。短時間勤務をはじめとする制度の拡充を急ぐことが大切である。

 環境が整っていないために仕事と子育てを両立できない現状は改めなければならない。子育て世帯を支える仕組みづくりに知恵を絞りたい。