米国の大統領選に、ロシア政府の関与があったのかどうか。世界が注目する疑惑の捜査が、新たな局面を迎えた。
 
 トランプ大統領の最側近として知られたフリン前補佐官が、駐米ロシア大使だったキスリャク氏との接触に関して連邦捜査局(FBI)に偽証したとして、訴追された。
 
 裁判所で罪を認めたフリン氏は捜査に全面協力すると表明し、司法取引にも応じた。重罪での起訴を免れる代わりに、大統領に不利な証言をする可能性も出てきた。
 
 トランプ氏はロシアとの共謀は「絶対にない」と述べたが、もちろん、言葉通りには受け取れない。
 
 他にも疑惑が指摘されており、今後の展開次第では、政権を揺るがしかねない。捜査を指揮するモラー特別検察官の真相解明を待ちたい。
 
 訴追文書によると、フリン氏は政権移行期の昨年末、オバマ前政権がサイバー攻撃による選挙干渉に絡んで対ロシア制裁を発動したのを受け、対抗措置を控えるようキスリャク氏に要請した。
 
 その翌日、ロシアのプーチン大統領は米外交官の国外退去処分をしないと表明した。
 
 フリン氏は接触に関して、トランプ氏の政権移行チームの幹部から直接指示を受けたと説明している。
 
 米メディアは幹部をトランプ氏の娘婿のクシュナー大統領上級顧問だと報じた。捜査が政権中枢に伸びるか、注視しなければならない。
 
 トランプ氏は一連の接触について、どこまで報告を受けていたのか。トランプ氏やクシュナー氏がフリン氏の偽証に関与していれば、違法行為に問われる可能性がある。
 
 モラー氏は、民間人が米政府に敵対して外国政府のために活動することを禁じた「ローガン法」を、トランプ氏の側近らに適用することを検討しているとの見方もある。
 
 複雑なロシア疑惑にメスを入れるために、法令を駆使するのは当然だろう。
 
 中でも、見逃せないのは司法妨害を巡る疑惑だ。捜査の中止を狙って、トランプ氏がコミー前連邦捜査局(FBI)長官を解任したという疑いである。
 
 コミー氏は在職中に、フリン氏の捜査を中止するようトランプ氏から要請されたと議会で証言した。
 
 一方、トランプ氏はツイッターでコミー氏の主張は「うそだ」と改めて反論し、疑惑を否定した。
 
 どちらの言い分が事実なのか、はっきりさせなければならない。
 
 米政権内のきしみも表面化してきた。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応で対話の機会を探るティラーソン国務長官を年内にも更迭し、保守強硬派のポンペオ中央情報局(CIA)長官を後任に充てる人事を検討している。
 
 交代すれば、トランプ政権の外交姿勢が強硬色を深める恐れが強い。
 
 日本は米政権の動向をしっかり見定める必要がある。