安倍政権は、新たな看板政策の「人づくり革命」と「生産性革命」を具体化する政策パッケージをまとめた。
少子高齢化を克服し、高い経済成長を目指すが、積み残された課題も目立つ。
全ての3~5歳児の幼稚園と認可保育所、認定こども園の費用は無償化する。
認可外保育所については利用料の一定額を助成するが、具体的な額は今後の検討に委ねた。どこまでを対象にするかは来夏までに結論を得る。
3~5歳児の教育・保育の全面無償化は、安倍晋三首相が衆院選で打ち出した。
しっかりと実現して、子育て世帯の期待に応えてもらいたい。認可外保育所に頼る家庭にも十分な配慮を求める。
0~2歳児は当面、住民税非課税世帯を対象に無償化を進めることになった。
2019年4月から5歳児を中心に一部で無償化をスタートし、20年4月からは全面的に実施する。
当然ながら、無償化で保育の利用者が急増し、真に保育が必要な家庭が締め出されることがあってはならない。
そのためにも待機児童対策が急務である。20年度末までに32万人分の受け皿を整備する方針にしたが、不十分ではないか。
高等教育の無償化では、住民税非課税世帯を対象に、国立大の授業料と入学金を免除し、私立大でも補助する。20年4月から実施される。経済的事情で進学できない恐れのある生徒には朗報だろう。
公明党が要求した私立高校授業料の実質無償化に関しては、安定財源の確保を前提条件として、年収590万円未満の世帯へ平均授業料を補助する。
幼児教育・保育から高等教育まで、支援を拡充させることに異論はない。
忘れてはならないのは財政再建との兼ね合いである。
財源は、消費税増税の増収分の一部の使途を変更して捻出する1兆7千億円と、企業が拠出する3千億円である。
本来、増収分は国の借金抑制に充てられるはずだった。このため、政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化するという目標を断念するに至った。
子どもたちへの支援を手厚くする代わりに、借金は後の世代に先送りされる。
それだけに、失敗すれば元も子もない。混乱なく、最大限の効果を引き出せる制度設計が重要である。
もう一つの生産性革命では、ロボットや人工知能など新しいイノベーションを導入することによって、生産性を押し上げる。
賃上げや設備投資、革新的な技術の導入に積極的な企業は、法人実効税率の負担が軽減される。
これらの施策は新味に乏しく、どこまで企業の投資を促すかは未知数だ。
大切なのは、「革命」と銘打った施策を看板倒れに終わらせないことである。