四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転を差し止める決定を下した。

 東京電力福島第1原発の事故後、高裁が原発の再稼働や運転を禁じる判断を示したのは初めてである。

 これにより、定期検査後の来年1月に運転を再開させる四電の計画は、事実上不可能となった。

 原発の再稼働に積極的な政府は、司法の判断を重く受け止めなければならない。

 争点となったのは、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の合理性や、原子力規制委員会が策定した新規制基準による審査の在り方、火山が噴火した際の危険性などである。

 高裁は、基準地震動や審査の在り方については、一審の広島地裁と同じく、合理的だと認めた。

 特筆されるのは、火山の影響による危険性が否定できず、伊方は原発の立地に適さないと断じたことだ。

 規制委は、火山活動に関する安全性を審査するに際して、「火山ガイド」という内規を定めている。

 それによると、電力会社は原発から160キロ以内にある活火山が、原発の運転期間中(原則40年)に噴火する可能性が十分に小さいかどうかを判断しなければならない。

 判断できない場合は、運転期間中に発生する噴火の規模を推定し、それもできなければ、過去最大の噴火規模を想定して、火砕流が到達する可能性が十分に小さいかどうかを評価するとしている。

 決定は、伊方原発から約130キロの阿蘇カルデラについて、現在の火山学では、運転中に噴火する可能性も噴火規模の推定もできないと指摘。その上で、約9万年前に起きた噴火規模で火砕流が到達するかどうか検討する必要があるのに、四電の地質調査やシミュレーションでは、可能性が十分に小さいとは評価できないと結論付けた。

 広島地裁は、破局的噴火が発生する可能性が「相応の根拠で示されたとは言えない」として、住民の訴えを退けた。それとは逆に、高裁は、危険性が小さいと判断できなければ立地は認められないとしたわけだ。

 原発は、過酷事故がひとたび起きれば取り返しのつかない事態になる。火山ガイドを厳格に適用し、安全性をより重視した判断は理解できる。

 今回の決定は、近くに桜島がある九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)などの安全性にも、疑問を投げ掛けたと言える。

 火山の影響は「十分に小さい」として、再稼働に「合格」を出した規制委の判断も改めて問われよう。

 伊方原発を巡っては、高松高裁と大分地裁、山口地裁岩国支部でも、運転差し止めの仮処分が争われている。安全重視の決定が続くのか、注目したい。