万葉集から引用するとは意表を突かれた。そんな声があちこちから聞こえてきた。元号予想が熱を帯び、多くの人が、菅義偉官房長官が新元号の額を掲げるのを今か今かと待ったはず。きのうの主役は紛れもなく「令和」の墨書だった

 元号を書で示すスタイルを思いついたのは、平成改元時、竹下登内閣で官房長官を務めた小渕恵三氏。あの「平成おじさん」だ。元号を口で説明するのは難しいため、視覚に訴えた。書家の職員が急いでしたため、発表時は生乾きだったそうだ

 その平成の書が一時、行方知れずになった。しばらくして、竹下元首相の孫でタレントのDAIGOさんが、テレビ番組で披露し驚かせた。書は竹下邸に眠っていたのだ

 「令和」の書は公文書扱いにし、歴史的文書として国立公文書館に永久保管される。公文書管理法がなかった30年前の改元時とは文書の扱いも大きく変わった。これも時代の流れだろう

 とはいえ、財務官僚による公文書の改ざんや廃棄が問題になったばかり。昭和の終戦前後には軍の重要書類が大量に焼却された。焚書の黒煙は3日間上り続けたという

 九州・太宰府の大伴旅人の邸宅で催された梅花の宴。「令和」は、そこで詠まれた和歌の序文から引かれた。春を告げる梅に黒い煙は似合わない。明るく、すがすがしい新時代を築きたい。