昨年の通常国会で、紛糾した加計(かけ)学園問題などのあおりを受け、廃案となった法案がある。国政や地方の選挙で、候補者数を男女で均等にするよう政党に促す「政治分野の男女共同参画推進法案」だ。
 
 与野党合意で一本化され、成立の方向だったが、会期終盤の混乱で審議入りすらできなかった。
 
 女性議員の数は世界水準に大きく水をあけられている。今国会ではぜひとも成立させ、政界での男女格差是正に向けた一歩を踏みださなければならない。
 廃案となった法案は、政党や政治団体に、候補者数をできる限り男女均等とするよう目標設定などの努力義務を課すものだ。禁止規定や罰則のない理念法にとどまっているものの、成立すれば女性の政治参画を後押しする初の法整備となる。既に、再提出に向け、法案成立を目指す超党派の議員連盟が動きだしており、機運は高まっている。
 背景には、昨年の衆院選の結果がある。各党とも女性議員増を進める公約を掲げながら、実際の候補者に占める女性の割合は全体で17・7%と低かった。法案に掲げる「均等」から程遠い数である。
 
 法制化により、どの政党が人材発掘や育成などの努力をしているか、有権者のチェックが働くことになるだろう。
 
 議会の国際組織である列国議会同盟(本部ジュネーブ)によると、衆院選前の女性の衆院議員はわずか9・3%で193カ国中165位だった。選挙後に微増したが10・1%にとどまる。この数は、女性が参政権を手にした1946年の衆院選時(8・4%)と大差ない。
 
 男女共同参画が進む中で、こと政治に関しては時代から取り残されているといえよう。候補者選定の段階から女性を着実に増やし、諸外国との溝を埋めていくことが求められる。
 
 議員になった女性の活動を支える環境整備も急がなければならない。昨年、熊本で乳児の長男を連れて議場に入った女性市議が、議事進行を妨げたとして厳重注意を受ける出来事があった。海外には赤ちゃん連れで議会に出席することを認めたり、育休中に代理人を立てられる制度を持ったりしている国もある。
 
 国や地方自治体は、女性の進出を妨げる要因を分析し、若い議員が出産や育児をしながらでも活動できるよう、先進的な事例を研究する必要がある。
 
 日々の暮らしは政治とつながっている。いま、多くの女性が子育てや介護をしながら働き、待機児童や長時間労働、非正規労働といったさまざまな困難と直面している。
 
 政策の優先順位や予算の配分は適正なのか、社会の在り方に疑問を持つ声が潜在化しているともいえる。
 
 だからこそ、多様な民意をすくい取り、政治に反映していかなければならない。性別による不均衡の解消が急がれよう。