最高裁が、これまで秘密にされてきた内閣官房報償費(機密費)の一部開示を認める初の判断を示した。

 官房機密費を巡っては、政府が使途や支払先などを一切明らかにしておらず、実態が分かっていない。

 開示の範囲は不十分だが、機密費運用の一端が分かる意味は小さくない。国民の知る権利に、ある程度応えた判断だと言える。

 政府はこれまでの姿勢を反省し、適切に開示しなければならない。

 機密費は国の事業を円滑に遂行するための経費とされ、使途に制限はなく、官房長官の判断で支出できる。重要施策への非公式な協力や情報提供の対価として支払われているようだ。

 会計検査院の検査は受けるが、特例として領収書などを提出しないことが認められている。

 非公式な協力や情報を得るために、支払先を秘匿するのはやむを得ない。

 最高裁も、機密費の特性を踏まえて、具体的使途の特定につながる部分は開示できないとした。

 その一方で、機密費全体の月ごとの支出額や、官房長官が政策判断で機動的に使う「政策推進費」への繰入額を記した部分などは「支払い相手や具体的使途を相当程度確実に特定することは困難だ」として、開示を命じた。

 限定的ながら機密費の動きがつかめるようになる。

 毎年12億円程度が計上される機密費は、ブラックボックスの中で運用されている。

 関係者が指摘してきた使途には、国民の血税にふさわしいとは思えないものがある。

 小渕内閣で官房長官を務めた自民党の野中広務元幹事長は2010年、共同通信などの取材に、機密費の具体的使途を明らかにした。

 長官在任中、「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」として、政府・与党幹部や野党議員、政治評論家らにも配っていたと証言。「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった」とも述べた。

 野中氏の証言通りなら、政権を維持するために、ばらまいていると言われても仕方があるまい。

 自民党から民主党に政権が交代する直前の09年9月には、麻生内閣の河村建夫官房長官が2億5千万円を引き出したことが判明している。

 河村氏は市民団体に背任などで刑事告発されたが、嫌疑なしで不起訴処分となった。

 現行の機密費の在り方にはやはり問題がある。一定の透明性を確保する仕組みの導入も含めて、制度の見直しを検討すべきだ。

 最高裁の判断を、機密費の情報開示に向けた一里塚にしたい。今後、政府がどこまで情報公開にかじを切るのか、改めてその取り組みを注視しなければならない。