沖縄県名護市長選で、自民、公明両党などの支援を受けた無所属新人渡具知(とぐち)武豊氏が初当選した。
争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。
反対派の拠点を崩した安倍政権は、移設推進に向けて追い風を得た格好である。
一方、「オール沖縄」の民意を盾に政府に対抗してきた翁長雄志(おながたけし)知事にとって、全面支援した現職稲嶺進氏が敗れたダメージは大きい。
選挙結果は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。ただ、市民が移設に無条件のゴーサインを出したとは言えまい。
共同通信の出口調査では、渡具知氏に投票した人のうち、移設に賛成は50%を超えた。だが、反対も30%に上っている。
渡具知氏は最後まで移設についての立場を明らかにせず、経済振興などを訴えた。勝利宣言では「経済振興あるいは子育て世代に対する支援が支持された」と述べた。初登庁の際にも、賛否を明らかにしなかった。
移設の争点化を避けたことが、勝因になったとの見方は否定できない。前回は自主投票だった公明党県本部の推薦を受けたことも見逃せない。政府が昨年4月に、地元の反対を押し切って護岸建設に着手したことで、市民の間に諦めムードが漂ったとの指摘もある。
夏にも政府は辺野古で土砂投入を開始し、埋め立てを本格化させる方針だ。既成事実を積み重ねて、知事選での争点化を避ける狙いもあるとみられる。
しかし、県や県民の理解が得られないまま、次から次へと工事を進めてよいはずはあるまい。
政府は、在日米軍再編に伴い影響を受ける自治体に支給される米軍再編交付金の再開を検討している。渡具知氏は「交付されるのであれば拒む必要はない」と歓迎する意向である。
防衛省によると、名護市は前市長時代に2007~09年度分の計約17億7千万円を受け取っていたが、移設反対の稲嶺氏が就任して以降、支給されていなかった。
政府は、渡具知氏が選挙戦で訴えた子育て支援や経済活性化も支援する構えだ。
12月に任期満了を迎える翁長氏は、知事選への態度を明らかにしていないが、稲嶺氏の敗北によって戦略の練り直しも迫られよう。
翁長氏は、3月に那覇地裁で判決が出る予定の移設工事差し止め訴訟で敗訴した場合も、埋め立て承認を「撤回」する案を持っている。移設への賛否を問う県民投票を、知事選と同日で実施する案も浮上しているようだ。
政府は、普天間飛行場の危険性を取り除くためには辺野古移設が「唯一の解決策」との立場を崩していない。その是非が再び知事選などで問われる。
そこで示される沖縄の民意は、極めて重いと言える。
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