セクハラや性暴力被害を告発する動きが世界中に広がっている。
発端は、米ハリウッド映画界だった。「#MeToo」(「私も」の意味)を合言葉に、性的被害を訴える人たちの声が、ツイッターなどで拡散。国境や業界の垣根を越えて、過去の被害を告発する女性が続出した。「沈黙を破った人たち」として、広く共感を呼んでいる。
性的被害は当事者の口から語られることは少ない。今回、表面化したのも氷山の一角にすぎない。誰にも相談できず苦しんでいる女性は多いはずだ。被害の声を上げやすい社会にしていかなければならない。
告発の動きは、日本でも相次いでいる。
女性ジャーナリストが、元民放記者に性暴力を受けたと告発する本を出版して、注目を集めた。人気ブロガーでもある女性作家も、著名なクリエーターからの被害を明かしている。
実態を直視し、被害者支援に力を入れるのはもちろん、セクハラや性暴力を断じて許さない社会へと変える努力が求められよう。
どうして、セクハラや性暴力は語られてこなかったのだろうか。
被害者にも落ち度がある、などと、法廷などで誹謗(ひぼう)中傷にさらされることがあるためだ。セカンドレイプ(第二の性的被害)という言葉もある。被害によって深い傷を負い、さらに非難を浴びるのであれば、勇気を出せない。
加害者が知り合いなど、身近に起こり得ることも一因だ。上司と部下、企業の就職担当者と大学生、サークルの先輩と後輩などの場合、強者が弱者に仕掛けるという力関係が存在する。
企業では、人事などの報復を恐れて相談ができず、泣き寝入りしてきた女性もいるだろう。
権力や地位を利用し、被害者が訴えにくい状況に付け込んで、セクハラや性暴力を繰り返す。そうした卑劣なことを、企業は見過ごしてはならない。
内閣府が「男女間における暴力に関する調査」(2014年)で、異性から無理やり性交された経験を女性に聞いたところ、1回以上あると答えた人は6・5%だった。決して少ない数ではない。被害経験者のうち、どこ(誰)にも相談しなかった人は67・5%に上った。
それだけに、被害に遭ったときに駆け込んで、安心して相談や治療を受けられる場が欠かせない。徳島県内でも、県の性暴力被害者支援センター「よりそいの樹とくしま」に相談が寄せられている。
高い専門性を持った職員の配置や、被害に遭いやすい若者への窓口の周知など、公的機関を一層充実させる必要がある。
女性ばかりでなく、男性や性的少数者も被害に遭っている。全てのハラスメントに厳しい目を向け、根絶したい。
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