学校法人「森友学園」に国有地が約8億円値引きして売却された問題を巡り、財務省の内部文書が次々と明らかになっている。
 
 前理財局長の佐川宣寿国税庁長官は、昨年の通常国会で、交渉記録を「全て廃棄した」と繰り返してきたが、虚偽答弁の可能性が高まったといえよう。
 
 なぜ、今まで文書を出さなかったのか。意図的に隠していたのではないか。疑いを晴らすためには、佐川氏自身から説明を聞く必要がある。政府、与党は野党が求める国会招致に応じるべきだ。
 
 財務省が新たに開示したのは、法律相談関連の内部文書20件である。
 
 学園側が10年以内に国有地を買い取る条件で、2015年5月に国有地の定期借地契約を締結するまでの、近畿財務局内での検討過程などが記されていた。
 
 麻生太郎財務相は「学園との交渉記録ではない」と釈明している。だが、交渉経緯を時系列でまとめた文書があるなど、まさに交渉に関する記録ではないのか。いくら否定しても説得力は乏しい。
 
 財務省は1月にも5件の内部文書を公表した。大学教授からの情報公開請求を受け、10カ月以上もたってようやく開示したものだ。
 
 一連の文書には「売買金額の事前調整に努める」といった記載もあった。佐川氏は、事前の価格交渉はなかったと答弁してきたが、矛盾するのではないか。
 
 事前協議については「ゼロに近い金額まで努力する」など、交渉を裏付けるような音声データも明らかになっている。財務省は金額のやりとりはあったと認める一方、価格交渉は行っていないと強調した。詭弁(きべん)と言うほかはない。
 
 見過ごせないのは、これらの文書が会計検査院に提出されたのが、昨年11月の検査報告書公表の前日だったことだ。そのため、報告書には反映されなかった。検査を妨害したと批判されても仕方あるまい。
 
 佐川氏は昨年7月に国税庁長官に就任して以来、一度も記者会見を開いていない。税の徴収を担う機関のトップとして、極めて異例のことだ。きょうから始まる確定申告への影響が懸念される。
 
 共同通信社が今月実施した全国世論調査では、佐川氏の国会招致を求めるとした人が66・8%に上った。政府、与党の姿勢に不信を抱いている表れだろう。
 
 国民が知りたいのは、国有地が値引きされた背景に何があったのかである。
 
 学園が開校を目指していた小学校の名誉校長には、安倍晋三首相の昭恵夫人が一時就いていた。首相周辺の関与や官僚の忖度(そんたく)があったのではないかとの疑念も、払拭(ふっしょく)されていない。
 
 問題は財務省の対応の是非や虚偽答弁の有無にとどまらない。政治への信頼を守るためにも、首相が率先して解明に当たるべきである。