自民党の憲法改正推進本部が、参院選挙区の「合区」を解消する憲法改正の条文案を了承した。

 衆参両院議員の選挙に関して「法律で定める」とした47条の改正が柱である。

 47条に<1>衆参両院の各選挙区は人口を基本とし、行政区画や地域的な一体性などを総合的に勘案する<2>参院選で広域地方公共団体(都道府県)の区域を選挙区とする場合、改選ごとに少なくとも1人を選出-などと明記した。

 地方自治の基本原則を定めた92条には、都道府県を「広域の地方公共団体」と規定する文言も追加した。

 この案が実現すれば、参院議員は「1票の格差」の大小にかかわらず、都道府県単位で選出できるようになる。

 合区を解消する抜本的方策だと言える。

 2016年の参院選で「1票の格差」是正のために「徳島・高知」「鳥取・島根」で実施された「合区」は、投票率の低下を招くなど深刻な弊害を生んだ。

 それだけに、人口の少ない地方の声を国会に届きにくくする合区は、早急に解消しなければならない。

 だが、憲法改正に向けたハードルは高い。改憲によらず、合区を解消する方が現実的だろう。抜本策ではないが、参院の定数増による格差是正は有力な選択肢である。

 与党内でも、公明党は都道府県単位の選挙区から大選挙区制への変更を求めており、47条の改正には否定的だ。他の党も、改憲による合区解消には消極的である。

 肝心の衆参の憲法審査会も議論が進んでいない。

 そんな状況で、自民党は来年夏の参院選までの合区解消が目標だという。だが、わずか1年半ほどの間に、国会発議、国民投票を経て、憲法を改正できるかは、大いに疑問だと言わざるを得ない。

 合区解消は、9条への自衛隊の存在明記、緊急事態条項の創設、教育無償化とともに改憲4項目の一つである。

 この中で、条文案が了承されたのは初めてだ。「たたき台素案」との位置付けだが、改憲論議を進める呼び水にする狙いも透けて見える。

 しかし、国民の間で憲法改正の機運は高まっていない。

 共同通信社の最近の全国電話世論調査では、安倍晋三首相の下での改憲には、反対が49・9%に上る一方、賛成は38・5%にとどまった。

 自民党は来月の党大会で、4項目の改憲条文案の公表を目指しており、残る3項目に関する協議も進める。

 安倍首相は、戦力不保持と交戦権否認を定める9条2項を維持したまま、自衛隊の存在を書き込む案を提起したが、党内では異論や対案も出ている。2項の削除を主張する石破茂元幹事長の意見を支持する声もあり、集約は難航しそうだ。

 選挙や安全保障など国の根幹に関わる憲法の改正は、慎重の上にも慎重を期さなければならない。