特殊詐欺の被害が徳島県内でも後を絶たない。

 「自分だけは大丈夫」という過信は禁物だろう。誰でも被害に遭う可能性があることを改めて認識し、被害の未然防止につなげたい。

 昨年1年間に県警が認知した特殊詐欺の被害額は、9282万円に上った。前年より7689万円少なく、6年ぶりに1億円を下回ったものの、件数は前年より4件増えて63件となった。

 被害額の減少と件数の増加は全国的な傾向だ。額が減ったのは、犯人側が警戒して要求額を小口に抑えているためともみられる。

 被害の広がりを示す件数の増加は、深刻に受け止めるべきだ。中でも、被害者が若年層にまで及んでいるのは見逃せない。

 昨年の県内の被害者を年齢層でみると、65歳以上が46%と半分近くを占めた。高齢者が依然として多いが、その割合は前年から9ポイント減少した。これに対し、40代までは40%と前年から7ポイント増えている。

 詐欺の手口も多様化、巧妙化している。

 近年、目立つのが、プリペイド式電子マネーを悪用するケースだ。昨年の被害63件のうち32件が該当する。

 インターネットの利用料金名目で金銭を要求し、購入させた電子マネーをだまし取るという手口である。電子マネーはコンビニエンスストアで手軽に購入でき、シリアル番号を聞き出せば、誰でも利用することができる。

 金融機関の窓口や現金自動預払機(ATM)で詐欺対策が強化されてきたのに伴い、コンビニの利用にシフトしたとみられる。

 今後も新たな手法が生まれる懸念がある。県警は、刻々と変わる犯行形態を迅速に把握し、周知を徹底するとともに、対策を講じるよう努めてもらいたい。

 特殊詐欺は、固定電話への着信や携帯電話へのメールが被害の端緒となる。知らない番号からの電話やメールで金銭の話を持ち出された場合には、まず詐欺を疑い、家族や知人、警察に相談することが大切だ。

 電話を常に留守番設定にしたり、「通話内容を録音する」という警告メッセージを発信する機器を取り付けたりするのも有効だろう。

 詐欺被害を撲滅するためには一人一人が気を付けるのはもちろん、地域を挙げて取り組む必要がある。

 徳島市では今月、行政機関や県警、金融機関など官民の団体が加わった被害防止ネットワークが発足した。

 被害の発生状況や新たな犯行手口に関する情報交換のほか、啓発活動などに取り組む組織で、県内では板野、上板両町に次いで3例目となる。

 県は、2019年度末までに全24市町村での設立を目指す構えだ。

 社会全体で、卑劣な詐欺は絶対に許さないという機運を高め、警戒を怠らないようにしたい。