平昌冬季五輪は、数々の名勝負が展開され、実り多い大会だった。
日本選手団は金4、銀5、銅4と、史上最多の13個のメダルを獲得した。その奮闘ぶりを、2020年東京五輪への弾みにしたい。
最大の収穫は、金3個を含む6個のメダルを獲得したスピードスケートの躍進だ。
小平奈緒選手は女子500メートルを五輪新記録で制し、1000メートルでも2位に入った。
高木菜那選手は女子マススタートで優勝し、団体追い抜きと合わせて2個の金を獲得した。一緒に団体を滑った妹の高木美帆選手は1500メートルが2位、1000メートルが3位で金、銀、銅を手にした。
前回ソチ五輪のスピードでメダルなしの惨敗に終わった日本が、抜本的に強化策を見直した成果である。ナショナルチームを創設し、オランダ人コーチが綿密で計画的な練習法で選手を鍛え抜いた。
注目のフィギュアスケート男子の羽生結弦選手は、66年ぶりに2連覇を達成した。
昨年11月に右足首を痛めたが、本番での圧巻の演技を見て、魂を揺さぶられた国民も多かったのではないか。
初出場で銀を獲得した宇野昌磨選手の活躍も光った。
スキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手の銅メダルも、感慨深い。ソチ五輪では4位と振るわなかっただけに、チームメートの温かい祝福も印象に残った。
カーリング女子の銅は、連綿と受け継がれたメダルへの執念が花開いたといえる。
開幕前から大会に影を落としたのは、ロシアのドーピング問題である。組織的ドーピングを行ったとしてロシア・オリンピック委員会(ROC)が資格停止処分を受けたため、169人が「ロシアからの五輪選手(OAR)」としての参加が認められた。
フィギュアスケート女子では、ザギトワ選手が金、メドベージェワ選手が銀と、OARの2人が上位を占めた。高い技術と芸術性を誇る両選手の演技は世界中を魅了した。
ロシア選手を全面的に五輪から排除していれば、興趣に乏しい争いになっただろう。
一方で、別の2人のOAR選手がドーピング違反で失格になったのは、問題の根深さをうかがわせる。国際オリンピック委員会(IOC)が、ROCの処分をすぐに解除しなかったのは当然だ。
ドーピング撲滅に向けた取り組みはまだ道半ばである。
開催国の韓国と北朝鮮の融和を巡る政治的思惑も、色濃く反映された。アイスホッケー女子の南北合同チーム「コリア」では、北朝鮮選手のベンチ入りを巡って現場介入もあった。
五輪に政治的な思惑を絡めてはならない。ドーピングも厳格に排除して、選手たちがフェアに戦える競技環境をつくることが大事である。
東京五輪を成功させるためには、平昌でクローズアップされた課題に、的確に対処しなければならない。