韓国は、日本の水産物の輸入規制の解除に動くべきである。世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)の是正勧告に応えてもらいたい。

 韓国は、2011年に起きた東京電力福島第1原発事故を理由に、福島など8県産の水産物輸入を禁止している。

 この問題について、パネルは、禁輸を「不当な差別」だと認め、是正を勧告する報告書を公表した。

 提訴していた日本が勝訴した形だが、これを不服として韓国が、上訴する方針を決めたのは残念である。

 上訴方針の背景には、食の安全に敏感な国民感情があるとみられる。韓国は、紛争処理が終わるまでは禁輸措置を継続するという。

 上訴を審理する上級委員会の判断は、早くても夏ごろの見通しで、解決にはなお時間がかかる。何とかならないものだろうか。

 8県は福島のほか、青森、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉で、水揚げ・加工された全水産物である。

 今回の報告書で、WTOの検疫関連協定に反して「必要以上に貿易制限的」とし、日本が主張した通り、ブリやサンマなど計28魚種の解除を促したのは適切だと言える。

 規制が事実上の貿易障壁になっている点も指摘した。全ての日本産食品を対象に、自らの検査で微量でもセシウムやヨウ素が検出された場合、プルトニウムなど他の放射性物質に関する検査証明書の提出を日本の輸出業者に求めている。これを不当と結論付けたのもうなずける。

 韓国は、こうした勧告を真摯(しんし)に受け止めてほしい。もちろん、日本も安全性について韓国の消費者に説明を尽くす責務がある。

 韓国との係争を早期に解決するためには、さまざまな場面で話し合いを進めていく必要もあるだろう。

 韓国は原発事故後、8県の一部水産物の輸入を禁止したのに続いて、13年9月には汚染水漏れを理由に8県の全水産物に対象を広げ、規制も強化した経緯がある。

 その対応に日本は科学的根拠がないと反論し、韓国に対して、規制撤廃を繰り返し求めた。しかし、韓国は応じず、15年8月にWTOへ提訴していた。

 農林水産物の輸入規制を巡っては、香港や米国、中国などが、東日本を中心に一部地域からの輸入停止を続けている。いずれも日本からの農林水産物・食品の輸出額で上位にある国だ。

 今回のパネル判定を受け、日本は輸入規制を続ける各国にも、解除を強く働き掛けていくという。輸出にも力を入れる構えだ。

 もとより、日本側は、日本産品の安全性について、理解を求める努力を続けなければならない。食の展示会、輸出入の商談会など、あらゆる機会をとらえて、各国の関係者にしっかりと訴えていくことが大切だ。