新約聖書の言葉が浮かんだ。「彼らは何をしているのか、わからずにいるのです」。イエスは、自分を十字架にかけた人々をもゆるしたが、人たる当欄には、とてもできそうにない
 
 量販店の陳列棚に並ぶスナック菓子に平然とつまようじを入れる動画が、ネットで反響を呼んでいる。同じ人物とみられる男が万引をする投稿も確認されている。もはや悪ふざけとはいえない
 
 反社会的な人間は昔からいる。でも、なぜわざわざ足のつくようなまねをするのか。愚問だった。そういえば、店員に土下座をさせたり、テーマパークで暴れたり、と世界に恥をさらした連中がいた。「つまようじ」も話題になることこそが最大の目的なのか
 
 二六時中、他人に評価され、承認されないと生きていけない人がいるらしい。ネットは、その数が少なくないことを暴いてみせる。かく言う当欄も、それがなかなか気分のいいものだと知らないわけではないのだが
 
 例えば、フェイスブックの「いいね!」。一線をやすやすと越えさせてしまう魔力とは一体何だ。われらもきっと「何をしているのか、わからずにいる」彼らと同じ地平に存在するのだろう
 
 人が、自ら作り出した事物に、逆に支配されてしまう状態を、随分昔にはやった哲学用語で「疎外」という。人とネットの関係も、そうなりつつはないか。