街中にありながら、街のざわめきが届かない。神戸市中央区の公園・東遊園地にある「慰霊と復興のモニュメント」は半地下式。奥行きのある静けさに身を浸せば、何事か、考えずにはいられない
コンクリートの壁に、犠牲者の名を刻んだプレートが、びっしりとはめ込まれている。生前は一度も会う機会のなかった学生の名を探した。震災の取材で、彼らの人生を追い掛けたことがある。1995年1月17日午前5時46分までの
居住まいを正し、つぶやきに耳を傾けてみる。ドラマと違って、沈黙が流れるばかりだ。だから例えば、と想像する。「俺はこう生きたんだ」。「今ごろはきっと」。こんな話なのかと、もう一度、銘板を見た
時計の針が戻せるのなら、あの日より前に帰りたい。そう思っているに違いない。亡くなったのは、彼らを含めて6434人。伝えたいことは、たくさんあるはずだ。阪神大震災の発生から、きょうで20年になる
語り継ぐことの大切さが叫ばれている。その経験を、防災に、減災に生かさないと。生き残るための知恵をくみ取らないと。列島に次の大地震が迫っている
そこで生きた人、生きている人の物語もしっかり伝えたい。志半ばで失われた命、かなわなかった夢を。壊滅した街を復興させた、人の力強さと優しさを。決して負けなかった物語を。