「人命は地球より重い」。1977年のダッカ事件の際の福田赳夫元首相の言葉が繰り返し浮かぶ。パリ発東京行きの日航機が日本赤軍に乗っ取られ、バングラデシュのダッカ空港に着陸。服役中の仲間の釈放と身代金600万ドルという犯人側の要求に福田首相が応じ、人質の乗員乗客は解放された。冒頭の言葉と超法規的措置で釈放した首相の判断が印象に残る
 
 過激派「イスラム国」とみられるグループによる日本人2人の人質事件で、殺害警告の期限が、きょう午後2時50分に迫った。2億ドルの身代金を支払えば、新たなテロ活動の資金となる恐れが強い。されど「人命は-」だ
 
 「なぜ、わざわざ危険な地域に行くのか」「身代金は日本国民の税金で賄われるのに」との声もある。どんな解決策を見いだすのか
 
 米国のケネディ元大統領は東西冷戦時代、東ドイツ内の陸の孤島だった西ベルリンを訪れ、「一人が奴隷の身にあれば、全ての人が自由というわけではない」と演説し「私もベルリン市民だ」という連帯の言葉で市民を励ました。今、テロを憎む全ての人々が2人の人質の支えになりたい
 
 一般教書演説でテロとの戦いを訴えた米国のオバマ大統領も、ケネディ氏同様、苦境にある人の真の力になってほしい。水面下の交渉も含め、安倍晋三首相と政府の救出努力に期待する。