込み上げてくる感情が抑えきれなくなりそうだから、筆を別な方向へと走らせてみる。そういえば、と書棚の奥をのぞき込み、1冊の古いルポルタージュを探した
ドイツのジャーナリスト、ギュンター・ヴァルラフさんはトルコ人に変装し、移民労働者の生活に潜り込む。そこで見たのは中東、北アフリカ、東欧からの移民など、使い捨てにして当然とする傲慢(ごうまん)な旧西独社会だった
<この国に住む外国人青少年のうちほぼ半数が、心の病に犯されていることも知った。若者たちは数知れない不当な要求にもうこれ以上耐えられなくなっている。この国で育った者たちには、帰るべき本当の祖国がない。彼らは故郷喪失者なのだ>「最底辺」(岩波書店)
残念なことに、30年以上前の告発が今も有効のようである。先進国と途上国、豊かな人はより豊かに、貧しい人はより貧しく。世界で格差が拡大している
そんな事情を含んでも、いささかも免罪できない。国を気取って命をもてあそぶ殺人集団よ、ハルナを返せ、ケンジを返せ
君らに向ける銃も、得手勝手な宗教解釈も持ち合わせていない。けれど覚えておくがいい。武力ばかりがテロ対策ではない。われらの武器は人道支援。差別や貧困の一掃へ非軍事的分野で貢献することだ。思い出すがいい。ナイフで築いた砂の城が崩れる前に。
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