過激派「イスラム国」による人質事件で、安倍晋三首相の勇ましい言葉遣いが目立った。強力なリーダーシップを印象付けたいのだろうが、識者から慎重な表現を求める声も出ている
東京五輪招致の成否は、福島第1原発の汚染水処理が鍵を握っていた。ヤマ場のIOC総会で、首相が「状況はコントロールされている」と大見えを切ったのを、覚えておいでだろう。世界が注目する中で、「私が保証する」「完全にブロックされている」と次々と強い言葉を重ねていった
根本的な解決策は見いだせていないと首をかしげる国民は多かった。だが、一国の首相である。自信満々に言い切った姿に、いくら何でも裏付けはあるのだろうと、多くの人が信じた
東京電力は高濃度汚染水の浄化処理を年度内に終えるとしていたが、完了を5月に延ばした。現地では地下水が建屋に流れ込むなどして、今も毎日約400トンが新たに汚染水となっている。どうひいき目に見ても「コントロールされている」とは言い難い
「政治の世界においては、もの忘れの才ほど珍重されるものはない」。「不確実性の時代」で知られるガルブレイス米ハーバード大名誉教授の辛辣な言葉だ
忘れたわけではあるまい。言葉を躍らせるのではなく、行動で示してほしい。原発事故に日本が震えてから間もなく4年だ。