歌手の矢沢永吉さんは小学生の時に父親を亡くした。3歳の時に母親はいなくなっており、おばあさんに育てられた。親戚をたらい回しにされたこともあるという
 
 20代までの人生の軌跡を振り返った「成りあがり」(角川文庫)からは、ミュージシャンとして成り上がろうとする矢沢さんの叫びが聞こえる。「キツイ旅だ おまえにわかるかい 山三つ越え乗り込んでいく ロックで超満員にしてやる」
 
 毎年、成人式の季節、30年以上も前にテレビ番組で語っていた矢沢さんの言葉を思い出す。晴れ着姿の新成人をタクシーから見た矢沢さんは「この中で何人の人が幸せになれるんでしょうかね」と運転手に語り掛けた。「ここから始まるわけです。男も女も。向こう10年間ではっきり差がつきますよ。やったやつとやらないやつの」
 
 成人する前から世の荒波にもまれている人は多い。矢沢さんのように辛酸をなめた人も、誰だって幸せになりたいと思っている。時間もお金もやりくりして成人式に出た人もいるはずだ。その門出を汚す権利は誰にもない
 
 1月の吉野川市の成人式の運営を妨害したとして、徳島市と吉野川市の男2人が威力業務妨害の疑いで警察に逮捕された。深く反省して出直してほしい。人生の旅はキツイ。努力と失望の連続だ。頑張れば、やり直しはいくらでもきく。