春告草との異名がある梅。花の便りを聞かずに足を運んだ。名所の明谷梅林は阿南市、5ヘクタールに4千本が植わっている。見頃はまだ先。<早梅の世間知らずの花二三>中原道夫。風景を俳句に託せばこんなところか。春の暖かさも、いまだ二、三輪

 南宋の詩人陸游は<北枝を愛す>とうたった。満開の南の枝より、咲き始めの北の枝の方がいい。彼に倣い「探梅」を気取って梅園を行く。ほのかに漂う春の香りを探した。なるほど、寒風に向かう花は凜として姿がいい

 ことわざにある。「桜切るばか、梅切らぬばか」。もう少し言いようもあるだろう、といったことは脇に置いても、梅は不必要な枝を切らないと、よい花実がつかないとされる

 剪定はかなりの重労働になる。明谷地区でも、農家の高齢化が進んでおり、大きな負担になっていた。そこに現れたのが、小松島西高校勝浦校の生徒たちだ。これからも剪定に施肥、草刈りなどをこなしていく頼もしい援軍である

 きのう、恒例の梅林まつりが始まった。担い手の高齢化と来園者の減少で、一時は催しの存続が危ぶまれたという。ボランティアの協力もあってのこの日。それを思えば梅の谷、景色も一層すがすがしい

 鶯宿梅の古樹の、無数のつぼみが宴の準備をしていた。下旬には開宴できるそうだ。もうすぐ谷は春色に染まる。