きょうは二十四節気の雨水。雪が雨に変わるころとされる。日差しは日を追うごとに力強さを増しているが、風はまだ冷たく余寒も厳しい。2月は冬と春が目まぐるしく入れ替わる時期だ
北国には、春一番ならぬ「雨一番」という言葉がある。立春を過ぎて、初めて雪が交じらないで降る雨のことだ。冬の終わりを告げるように降る雨に、北国の人々は雪から解放される喜びをかみしめるのだろう
徳島にも春の雨を指す味わい深い表現がある。「木の芽起こし」。「阿波俳句歳時記」(徳島新聞社)によると、祖谷地方で早春の雨のことを言う
一雨ごとに木々が芽吹き、山が黄緑に染まっていく。目を閉じてそんな情景を思い浮かべると、寒さで縮こまっていた体がほぐれるだけではなく、へこたれそうになった心も元気づけてくれそうだ
四季に恵まれた日本は、季節の移ろいや気象を表現する言葉が豊かだ。春の雨の呼び名もバラエティーに富み、「万物生」という聞き慣れない異称もある。暖かい雨を浴び、全てのものが生き生きとよみがえる。春は再生の季節であり、雨は生命への応援歌なのだ
この冬、県内は山あいを中心に南国らしからぬ大雪に見舞われた。3人の犠牲者が出たほか、孤立した集落では大勢が震えながら不安な夜を過ごした。いつにも増して、春が待ち遠しい。