カタツムリは家を背負って生きている。重いか、軽いか。いかにも愚問である。気に留めているはずがない
分かりつつも、殻の重さに気付いたカタツムリを想像してみる。悲劇は目覚めた瞬間から始まる。重くても脱ぎ捨てられないのだから
人の場合は、少しだけ違う。確かに民法はいう。夫婦別姓は認めない、一緒に殻を背負え、と。だから不利益があっても、あえて事実婚を選ぶ人が少なからずいる。結婚後も女性が仕事を続けるのが一般的になり、法と現実にずれが生じている
同じく明治以来の規定で、女性だけに設けられた離婚後6カ月間の再婚禁止期間にも批判がある。子の父親を推定する際の混乱を防ぐ目的があるというが、DNA鑑定が進んだ現在、必要性はあるか。「女性だけ」に合理性はあるか
夫婦別姓禁止と再婚禁止期間。民法の二つの規定で最高裁が初の憲法判断を示す見通しとなった。国際的に特異で、時代にそぐわない性差別との指摘がある一方、失われれば「伝統的家族観が崩れる」といった声も根強い
いずれも家族の形を決める基本規定である。なのに政府の動きは鈍い。国会も同様だ。相続での婚外子差別のように、最高裁の決定を受けやむなくというのでは後ろ向きに過ぎる。誰が言ったか「女性が輝く社会」。殻から抜け出て議論を尽くすときだ。
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