戦前の経済学者・猪俣津南雄の踏査報告「窮乏の農村」(岩波文庫)にある。<食うだけには事欠かないもののように思われていた農民が、一番食うことに脅かされるということは何という皮肉か、しかも農民は自分自身を食いつくして、すでに次の時代までを食い始めている>

 昭和恐慌下の農村と今。生活のレベルは比べるべくもない。しかし、見通しの暗さでいえば、それほど変わらないかもしれない、と思うことがある。農山村で過疎高齢化は恐ろしい勢いで進んでいる。砂糖のように甘い未来は、なかなか描けない

 西川公也農相が辞任した。補助金交付が決まっていた木材加工会社や砂糖業界から寄付を受けたほか、不明朗な政治資金の処理も指摘されている

 70歳を過ぎ、ようやく得たポストである。違法性もないと主張する。そんな釈明も、疑問をかき消すまでには至ってない。農家の反発も大きい環太平洋連携協定の交渉は大詰めを迎え、農業分野の規制改革は今国会の最優先課題でもある。扇の要に座っていられようはずがない

 第2次安倍内閣以降では小渕優子前経済産業相、松島みどり前法相に続き、3人目の閣僚辞任となる。首相自身も言うように、任命責任が問われよう

 農相が農政改革の足を引っ張るとは「何という皮肉か」。まずは政治不信を拭うことが重要だ。