「君たちはどう生きるか」。戦前戦後と活躍したジャーナリスト吉野源三郎が発した、この真っすぐな問い掛けに、どれだけの人がしっかりと答えられるだろう

 同名の著書の初出は、作家山本有三らが編んだ「日本少国民文庫」の1冊というから、本来は子ども向けなのだが、出版からおよそ80年がたつ今もなお、大人が読んでも示唆に富む

 子どもはいつも自分中心、天動説の信奉者である。大きくなるにつれ、人と人との関係の中で生きていることに気付き、地動説のような考えに変わってくる。こういった、ものの見方に始まり、いい人間とは何か、論考が続いていく

 「どう生きるか」|。人類誕生以来の根源的で普遍的な問いだ。再読し思う。広く、深く、この問いとじっくり向き合う営みが今、自分にも、慌ただしい社会にも欠けているようである

 こうした営為とは対極にある過激派組織を思い浮かべてみるといい。殺人を、人権侵害を、古代文明の遺物の破壊を正義だと言う。積み上げられてきた人類の英知をご破算にしたいらしい。なのに「イスラム国」への若者の流入は止まらない。狭く浅く、短絡的な思考が世界を蚕食している

 きょう、徳島県内の多くの高校で卒業式がある。門出の日、ぜひ答えを探し始めてほしい。もっと広く、深く。「どう生きる」、その答えを。