半世紀後の今もさまざまな黒幕の名が挙がる米国のケネディ元大統領狙撃の例が示す通り、暗殺に陰謀説は付きものだ。今度の事件は、プーチン政権下のロシアで起きた

 クレムリンに近いレストランで、ウクライナ人のモデルの女性と夕食を共にした男性が、何者かに橋上で銃撃された。死亡したのは反プーチンの野党有力指導者ボリス・ネムツォフ元第1副首相。政権が認めないウクライナ東部への軍事介入の証拠を入手し、暴露を計画していたとされる。まるで、東西冷戦時代のスパイ映画のようなシーンとシナリオではないか

 当局は捜査のためとしてネムツォフ氏の自宅を捜索し、書類を持ち帰った。こうなると、疑いが政権にかかるのも無理はない。野党側は殺害に政治的背景があると訴えるが、政権側は当然否定。では犯人は誰なのか。黒幕はいるのか…。過去の事件と似た構図になる

 2006年には、チェチェン共和国独立派への弾圧政策を批判していた女性記者が殺害された。実行犯が刑を受けたが、背後関係は分からない。ロンドンで起きたロシア元情報機関員の毒殺事件では、英警察がKGB元職員を容疑者と断定したが、ロシア側は関与を否定した

 プーチン氏は暗殺事件の捜査を陣頭指揮する構えだが、犯人を捕らえて真相を解明しなければ、国民は到底納得すまい。