フィリピン中部シブヤン海、水深約千メートル。鋼鉄の墓標は、光も届かぬ海の底に沈んでいた。不沈をうたわれた旧日本海軍の戦艦「武蔵」とみられる

 1944年10月、米軍機の攻撃で沈没した。戦死者は約千人。当時の選挙権年齢「25歳以上」に達していない乗組員も少なくなかったろう

 国に物申すすべもなく亡くなったのか、と思えば切ない。もとより男子だけの翼賛選挙。それほど意味があったかとの疑念も湧くが、一票に願いを託してみたい、そんな気持ちを持つ人もいたのでは

 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公選法改正案が衆院に提出された。早ければ来夏の参院選から適用される。国際標準とはいうものの、本心を言えば危なっかしい気もする。川崎市、中1殺害事件の主犯格は18歳。大人と認められるか? とはいえ…

 <戦争は、一部のものがたしかに煽動してひき起こしたものかも知れないが、戦争を根強く持続させたのは、やはり無数の人間たちであったにちがいない>。作家吉村昭さんは「戦艦武蔵」のあとがきにこう記す

 国民が狂気の海におぼれるような時代が、再びこようはずはない。ただし未来は私たちの選択次第。年金などの社会保障、財政赤字の付けも回されそうな若い世代である。一票。このささやかな異議申し立ての手段ぐらい、やはり当然か。