島は緑。だんだんに色を薄くしてずっと先まで連なっている。「ボーッ、ボーッ」と港から汽笛。古い教会で母は娘に言った。「長い音2回は出発の合図。泣かんとよ。前進、前進」

 三木孝浩監督の最新作「くちびるに歌を」(シネマサンシャイン北島で上映中)は、同じく本県出身のアンジェラ・アキさんの曲「手紙~拝啓 十五の君へ~」をモチーフにした映画だ

 ピアノが弾けなくなったピアニストと、自閉症の兄を支える弟、親に捨てられた子…。心の傷を癒やしつつ、教師と中学生は、やがて前を向いて歩きだす。長崎県五島列島の美しい風景に抱かれて。過去から未来へ吹く、島を渡る風を受けて。歌も力に。「15年後の自分」へ手紙を書く子どもたちの姿がまぶしい

 抱いた夢も描いた未来図も、その通りにいくことはまれ。それでもと思う。人生は試してみるだけの価値がある。一歩、一歩、前進、前進。今をしっかり生きていこう

 映画の題は、ドイツの詩人フライシュレン作「心に太陽を持て」の一節。締めくくりは-。<苦しんでいる人、/なやんでいる人には、/こう、はげましてやろう。/勇気を失うな。/くちびるに歌を持て。/心に太陽を持て。>(山本有三訳)

 この欄に目を落とした、もしあなたが中学生なら、さあ、復唱してごらん。「くちびるに歌を」。