故意に人を傷つければ傷害事件。罪に問われる。ところが、反対に感謝される仕事がある。外科医である

 罪に問われないのは当然ながら、それが病気やけがを治すのに必要な行為だからだ。能力と判断の及ぶ限り医師は患者の利益を考え、害を与えてはならない。古代ギリシャ、ヒポクラテスの時代から、そう言い習わされてきた。群馬大病院の40代男性医師も知らないはずがない医療関係者の常識である

 なのに、どうしてか。この5年ほどの間に死なせた患者は、腹腔鏡による肝臓切除で8人、開腹で10人。中には死亡後の検査で、がんではなかったと判明した例もある

 難易度が高い手術なのに、院内の倫理審査を受けていない。肝臓が手術に耐えられるかどうかの検査をせず、患者側への説明は不十分。カルテへの医療記録の記入もほとんどない。ずさんにも程がある

 病院側は男性医師に過失があったと認めた。理解できないのは「手技は稚拙」とまでいわれる医師が、なぜ手術を続けられたかだ。18人もの命が失われるまで事態が把握できないとは何事か。閉鎖的な診療体制など、組織の在り方に問題があったことは明白だろう

 徳島県内の医療機関で、よもや同様のことが、とは思う。それでも、あえて言っておきたい。一つしかない命を託すのである。みじんも曇りなきよう。