ある日の教室。子どもが数人、地図帳を囲んであれこれ。「こまめ、なわけない。大きな豆と書いて『だいず』だろ。なら『あずき』だよ、この島は」と賢そうな子が胸を張った。一同納得したのもつかの間、誰かが恐る恐る「しょうどしま、ちゃうか」

 別の日。「ベアって何で」「それクマじゃ。ぬいぐるみにあるで」。英語塾に通う子が分かったふうに「耐える、我慢する、なんて意味もあるぞ」。一同「耐える、ねえ」

 そんな話があったとか、なかったとか。縁の無い彼らは正解を聞いても首をかしげたままだったろう。「ベースアップ」。大人ですら昨年まで、久しく忘れていた

 春闘の集中回答日だったきのう、相場のけん引役となる自動車、電機大手で、現行の要求方式となって最高額の妥結が相次いだ。政府肝いりの「官製春闘」。余力に乏しい中小、地方の企業に、どこまで波及するか

 賃上げの原資を下請けから搾り取れ、なんてことは願い下げだ。働く人の4割を占める非正規労働者の待遇改善も待ったなし。厚生労働省の調査では、正社員の賃金を100とすれば、非正規は63にとどまる

 デフレ脱却と格差縮小の願いが詰まった春闘である。「ほらみろ、大勢が『耐える。我慢する』のがベアでえ」。既に大人になった先の子どもたちが、ぼやかずに済む春にしたい。