阿波路にお遍路さんの姿が目立つ季節になった。四国霊場八十八カ所巡りは全長約1400キロの道を弘法大師空海とともに歩く「同行二人」の旅。札所を訪ね、心を洗いながら人々と触れ合う。歩き遍路なら、人にもよるが40~50日かかる

 その道のりを1日8時間余り歩くとして単純計算すれば、11日間で歩き切る男がいる。石川県で行われた陸上男子20キロ競歩で、1時間16分36秒の世界新記録を樹立した鈴木雄介(富士通)である

 世界新の一報には一瞬耳を疑った。日本選手が陸上の五輪種目で世界記録を樹立したのは、2001年の女子マラソンの高橋尚子以来14年ぶりで、男子では1965年のマラソンの重松森雄以来50年ぶり。歴史的な快挙だ

 高橋はドイツ、重松は英国が舞台。石川県能美市出身の鈴木は国内、それも故郷で金字塔を打ち立てた。称賛して余りある。6月の北京の世界選手権では、左膝痛で36位に終わったロンドン五輪の雪辱を期待する

 徳島県でも渕瀬真寿美(大塚製薬)の活躍で競歩は身近な種目になりつつある。今回の女子20キロでは4連覇を狙ったが8位になり、世界選手権代表の座は逃した。今後の活躍を祈る

 春風を背に競歩選手のような歩型で遍路道を歩いてみるのも一興だろうか。どんなに速く歩いても、お大師さんが離れることは、もちろんない。