「リオ・デ・ジャネイロの夥しい灯が眼下に展開した。黒大理石の卓に置かれた頸飾のように、…峰をめぐる海岸線の燈火が見える」(アポロの杯、新潮文庫)
作家の三島由紀夫は1952年、機中から見て感動したリオの夜景をそう描写している。「私はこの形容の凡庸さを知っているが、或る種の瞬間の脆い純粋な美の印象は、凡庸な形容にしか身を委さないものである」。冒頭の自らの描写を評したこの一節は見事だ
64年東京五輪の三島の取材ノートが確認された。重量挙げで金メダルに輝いた三宅義信選手について「バアにさはつてから、永いこと息をためる。そして上げる。見事に上げる。大拍手」と記している。このメモからは50年前の五輪の一瞬のシーンが、脆い純粋な美の印象とともに眼前に広がる
来年8月5日のリオ五輪開幕まで500日、欧州から吉報が届いた。卓球ドイツ・オープンの女子シングルスで伊藤美誠選手が最年少で優勝した。14歳。「今はうれしさが爆発している」と談話も弾む
藍住町出身でバドミントン女子の松友美佐紀選手らリオ五輪を目指す県勢も今、伸び盛り。大舞台へ通じる国際大会での吉報を待つ。小欄でも、その活躍ぶりを、たとえ凡庸な形容であってもリアルに一瞬の美とともに届けたい。リオ五輪、そして2020年東京五輪でも。