その知らせを聞いた時、あまりにも意外で気の毒な事態に一瞬、息をのんだ。がんとの闘いはこんな過酷な選択を、人に強いるものなのかと
 
 音楽プロデューサーのつんく♂さんが喉頭がん治療のため、声帯を摘出する手術を受けた。自らプロデュースした母校・近畿大学の入学式のフィナーレに登場。モニターで「一番大事にしてきた声を捨て、生きる道を選びました」というメッセージを学生に伝えた。ロックバンド「シャ乱Q」のボーカルとして自らの思いを歌に託してきたつんく♂さんにとって、声をなくしたのは耐え難い苦しみに違いない
 
 「私も声を失って歩き始めたばかりの1回生。こんな私だからできること。こんな私にしかできないこと。そんなことをこれから考えながら生きていこうと思います」。その決意には、病を乗り越えて前に進もうとするひたむきさが感じられた
 
 つんく♂さんがプロデュースした「モーニング娘。」の大ヒット曲「LOVEマシーン」は弾むようなリズムで、思わず踊り出したくなる。<明るい未来に 就職希望だわ 日本の未来は…>
 
 つんく♂さんの思いを伝える声になりたい。そう願うのは歌手やファンばかりではあるまい。日本には、若者たちを元気づけ、明るい未来へと背中を押すつんく♂さんの発想と力が必要だ。今後の活躍を祈る。