若葉を透過した光が、山道を黄緑色に染める。徳島市の城山は標高61メートル。陽光をたっぷり含んだ地面をしっかり踏みしめて、辺りに満ちる春を胸いっぱい吸い込んでみる

 国の天然記念物マリモで知られる北海道釧路市の阿寒湖では、遊覧船が湖の氷を割って航路をつくる作業を本格化させたと、きのうの本紙夕刊が伝えていた。列島、さまざまな春模様である

 立山連峰を貫き、富山と長野を結ぶ雪の壁「立山黒部アルペンルート」も、4カ月半ぶりに全線開通したそうだ。はて、北国の猫たちはどうしているだろう。城山の山上へと歩みを進めながら思う

 というのも、この前から夜な夜な、わが家の近所をうろつく野良猫がいる。悪魔もかくや、といった声を上げて、騒がしきこと、この上なし。<猫の恋初手から鳴(なき)て哀也(あはれなり)>志太野坡(しだやば)

 雨がちだった上旬。国道沿いのツツジも、ちらほら咲き始めた。らんまんの春を十分味わういとまも与えず、季節は次の衣装をまといつつある。頼んでも、決して待ってはくれない花と春。少し前のはやり言葉を借りれば「いつ楽しむの? 今でしょ!」

 冬を経て再び、さまざまな命が鼓動を打つ。城山の老木も生き生きとしている。光のさざ波が街を包み、田畑を洗う。歌声が聞こえてきそうな週末である。<祝詞(のりと)すぐ田の風に乗り春祭>鍵和田(かぎわだ)ゆう子。