その出自から、こんな物騒な事件が起きるのも宿命かもしれない。インドネシア、バンドン会議に出席中のあるじの不在を狙ったのかどうか
 
 首相官邸に、小型無人機「ドローン」が落下した。機体には発炎筒やペットボトルのような容器が付いており、放射性セシウムも検出された。意図は不明だが、猛毒のサリンや爆発物を搭載していれば、大惨事にもつながりかねない事態である
 
 1月には、米国のホワイトハウスでもドローンが墜落する騒ぎがあった。なのに、警備に隙があったと言わざるを得ない。官邸は、今そこにある危機に、あまりに無頓着だったのではないか
 
 ドローンといえば無線操縦ヘリのイメージがあるが、英語で無人機を指す。だから米の「対テロ戦争」に従軍する機体もまたドローンと呼ばれる。もともとは軍事用だ
 
 近年、飛躍的に性能が向上し、低価格化が進んでいる。カメラを搭載しており操縦は簡単。<世界を俯瞰(ふかん)することを可能にする無人機の潜在的用途はほとんど無限にある>「無人暗殺機ドローンの誕生」(文芸春秋)。悪用されるのは時間の問題だった
 
 低空で飛ぶ分には航空法の制限を受けず、免許もいらない。事故が増えているのに、運用は「無法状態」とされる。図らずも日本の中枢が身をもって教えてくれた。規制の在り方を早急に考えたい。