「事件によって国家中枢の警備態勢の死角が浮き彫りにされた」との報道もあった。事の重大性とは釣り合わないコミカルな響きが印象に残る。「ドローン」。遠隔操作で飛ばす小型無人機の通称だ
 
 首相官邸の屋上で見つかる事件が起きるまで、存在を知らなかった人も少なからずいただろう。英語で「蜂の羽音」が語源の無人機1機が、蜂の巣をつついたような騒ぎを引き起こしている
 
 自民党の二階俊博総務会長は「こんな屈辱的なことはない」と、官邸や国会上空の飛行を禁止する議員立法を急ぐ構えだ。他にも法規制や警備の在り方について、各界から議論百出である
 
 新しい技術が世に出れば、ルール作りが求められるのは当然だろう。ただ、気掛かりなのは、対応が泥縄に過ぎはしないかという点だ
 
 昨年11月、神奈川県内のマラソン大会で空撮用のドローンが墜落して、スタッフにけがをさせる事故があった。トラブルの報告は他にもあり、政府や国会に問題意識があれば対策は可能だったのではないか
 
 官邸に侵入を許しただけではなく、長らく気付かなかった失態も重なった。永田町では今、面目を失った関係者の怒りや焦りが渦巻いているに違いない。ドローンは流通や災害対策などで期待を集める技術でもある。規制の議論に際しては、まずは冷静さを取り戻してほしい。