戦争は時に、戦後の新しい命にも重荷を背負わせる。結合双生児として生まれたベトナムのベトちゃん、ドクちゃんのケースがそうだ
双子はベトナム戦争当時、米軍が大量の枯れ葉剤を散布した高原で生まれた。その影響だろう。下半身がつながった2人が、ホーチミン市の病院で、日本の医療支援を受けて分離されたのは1988年10月のことだ
結婚し自らも双子に恵まれたドクさんは34歳になり、手術を受けた病院で働いている。「過去を振り返るのではなく、未来に向かっていきたい」と言う
75年4月30日のベトナム戦争終結から今日で40年。今や中国の海洋進出は、ベトナムなど周辺国との大きな火種になっている。ベトナム戦争から世界は多くを学んだ…はずではなかったか? 戦争が幸福な家庭にもたらすものは、死、身体障害、心の病、自殺、家族崩壊-。平和は何よりも尊い
残念ながら、ベトさんは脳症の後遺症から寝たきりで2007年10月に亡くなった。あの世のベトさんに聞いてみたい。今、ベトナム国民に必要なものは何かと。それは軍事支援ではないと思うのだが
ドクさんの双子の名は、男児が「富士」のベトナム語発音でフー・シー君、女児は桜のベトナム語訳でアイン・ダオちゃん。他国軍の支援より、医療で人命を救うことが日本の取るべき道だろう。