本紙「読者の手紙」欄に、気になる投稿があった。先日、初めて徳島市を訪れたという北海道の男性からである

 お遍路が長年の夢だったそうだ。さぞ期待しての徳島入りだっただろう。ところが、乗り込んだタクシーの運転手が言うことには「徳島は何もない。県外か外国などに行った方がいい」

 こんな言い草はない。せっかく楽しみにやって来た人を追い返すようなものである。それが本意ではなく、運転手さん一流の謙遜だったとしても、まるで伝わっていない。手紙の主も「あぜんとしてしまいました」と記す

 ゴールデンウイーク真っただ中。今年の話題の中心は何と言っても北陸新幹線沿線だ。兼六園に近江町市場、ひがし茶屋街…。終点の金沢だけでも見どころは多い

 比べて本県。正直言って観光資源が豊か、とは言い難い。「徳島は何もない」。運転手さんではないが、つい口をついて出そうになる。ただ、忘れずにおきたい。愚痴を積み上げたところで、それは愚痴でしかなく、何も生み出しはしないことを

 観光発展途上県とはいえ、渦潮に霊場、祖谷、阿波踊りに人形浄瑠璃と、なかなか個性的な面々をそろえている。しっかり手入れすれば、大きく花開きそうな場所もある。訪問客の旅情を、われら自らそいでいる場合ではない。古里の宝を生かさずにどうしようか。