塚田一郎国土交通副大臣が辞任した。事実上の更迭だ。

 塚田氏は選挙応援で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元の道路建設を巡り、「首相や副総理が言えないので、私が忖度した」と発言、批判を浴びた。

 現職副大臣が利益誘導を認めたとも受け取れる重大な発言で、到底看過できない。

 野党の罷免要求を再三、拒否していた首相も、統一地方選や7月の参院選への影響などを考慮し、一転して更迭に踏み切ったようだ。

 ただ、これで済む話ではない。塚田氏は「事実と異なる発言」として撤回したものの、説明責任を果たしていない。事実関係を明確にする必要がある。首相の任命責任も問われよう。

 塚田氏が発言したのは、1日に北九州市で開かれた福岡県知事選の自民推薦候補の集会だ。

 北九州市と山口県下関市を新たに結ぶ「下関北九州道路」について、首相と麻生氏の地元事業だと紹介したうえで、自らが国直轄調査とすることを決めたと明言した。

 塚田氏は自民党参院議員で麻生派に所属している。知事選では麻生氏が擁立した候補が劣勢とされていることから、麻生氏の存在感をアピールする意図もあって「忖度」という言葉を持ち出したのかもしれない。

 選挙応援では、誇張や真偽が不明確なことも少なくない。しかし、発言の経緯や背景などをみると、「事実と異なる」との言い訳は、釈然としない。

 下関北九州道路の建設構想は、1998年策定の全国総合開発計画(全総)に明記されたが、その後、国の財政難などから凍結された。2012年に第2次安倍政権が発足し地元で実現に向けた動きが活発化。19年度からの調査再開が決まり、予算が付いた。

 塚田氏は国の直轄調査への移行に関して昨年12月20日、自民党の吉田博美参院幹事長から要望を受けたと説明したが、吉田氏は関与を否定するコメントを発表した。

 これに対し、国交省は要望を受けた際、道路局長や担当課長も同席していた可能性があると説明している。

 公平であるべき公共事業を恣意的に行っていたとの疑念が生じている。塚田氏の更迭で幕引きにしてはならない。

 森友・加計学園問題では、政権幹部らへの官僚の過度な忖度により、行政がゆがめられたと批判された。塚田氏はその認識も欠如している。

 これまでも度々指摘されてきた安倍政権の「慢心と緩み」によるものだろう。

 ところが、首相はこうした指摘を軽く見ているようだ。官僚らの失言や不祥事があっても罷免しなかったことに表れている。

 身内に甘い姿勢は党内の支持は得られても、国民の意識とは乖離するばかりだ。政治不信が高まることも懸念される。首相はもっと危機感を持つべきだ。