「おしゃれに」だったか、それとも「格好良く」か。西日の差す事務所で、確かそんなことを口にした。「その方が俺だって楽しいよ」。それから15年余りがたつ
山下安寿さんはビートルズを聞かせる、県内でも名の通ったバンドのリーダーだ。本職は社会福祉法人ハートランドの理事長。障害者の就労支援事業を手掛けている
「心を病む」人もその一員として、当たり前に生きられる街にしたい。そんな信念がある。もっと大勢の人と交わり、もっと働きがいのある就労支援事業所にするには「おしゃれ」も大事な戦術の一つ
慣行や制度からはみ出すことも。差別の現実を知る人ほど反発は大きく、「できるものか」と冷ややかだった。それでも次第に理解は広がり、徳島市の中心商店街で運営する、障害者の働く喫茶店やケーキ工房は、専門店と肩を並べる人気に
「らしさ」を感じさせない店の雰囲気もさることながら、それぞれに物語を抱え、ようやくここまでたどり着いた人たちが、楽しそうに働く姿が何より。事業所は、そこに集う人たちの夢の出発点。工夫あれこれ、季節に1回、ディナーも始めた
店でミニライブを開くことがある。<君は夢想家というかもしれない。でも、僕は一人じゃない…>。先夜はジョン・レノンの「イマジン」など。選曲の理由は聞きそびれた。