その日を迎え、こんなジョークが人々の口をついて出たそうだ。「もう千年が過ぎてしまったのか」。ナチス・ドイツが無条件降伏し、ヒトラーが描いた千年王国の夢がついえたのは1945年5月8日

 政権に就いて12年。この短い期間に、ホロコーストと戦争、未曽有の破壊と大量殺りくを引き起こした。記録は種々あれど、ピカソは、スペイン内戦時にナチスが行った無差別爆撃の残虐さを、作品「ゲルニカ」にとどめている

 絵を見た独空軍の将校が問うたという。「これはあなたのお仕事ですか」。ピカソは微笑していわく「いいえ、あなた方のお仕事です」-。当時のブラックジョークである。「ナチ・ドイツと言語」(岩波新書)から引いた

 欧州で第2次大戦が終結して70年。各地で平和式典があった。犠牲者追悼の思いは変わらないが対独勝利記念日とこられると、元同盟国としては複雑だ

 われらは、いつまで「敗戦国」なのか。戦後、他国を脅かしたことはなく、民主主義と人権、法の支配といった価値観を大切にしてきた両国なのに。9月には、中国で「抗日戦争勝利70年」式典がある

 和解に導く責務は、攻め入った側にあろう。われらの仕事には違いない。それでも、歴史の政治利用が少々過ぎるのでは。最近、ぼやきが口をついて出るときも、しばしばなのである。